ヴァレンタインデー企画SS・Fate編
私が主役よっ!
衛宮士郎は悩んでいた。朝、彼にとっては遅い時間とも言える午前七時位からずっと。
そう、登校途中も然り。
教室で友人と挨拶を交わしながらも然り。
授業中も然り。
彼がなぜこんなにまで悩んでいるのかと言えば。
「・・・・・・どうしたものか。」
実は単純な話で、今朝に限って彼は寝坊してしまったのだ。いつもの彼なら
1.毎朝の鍛錬
2.みんなの朝食&お昼(お弁当含む)を作る
3.朝食を食べて登校
というスケジュールになっているのだが、今日はこれらをぜーんぶエスケープして惰眠を貪っていたという事なのだ。
これが一般人ならば「なーんだ、まあ仕方ないんじゃね?」と軽く済ませられる話なのだが、彼の場合はちょっと違う。
「とりあえずセイバーのお昼はなんとかしてきたし、桜・藤ねえ・ライダーご一行様は合宿中で居ないし、一成の昼は・・・・・・。まあ、適当に済ませてもらうとしてだ。問題は、だ。」
そう。問題は只一人。通称「赤いあくま」こと遠坂凛その人である。聖杯戦争で共闘し、いつの間にか愛を育んだ二人(笑)であるが、彼らの通う学園ではまだ二人の事は知られていない。
というのは学園内だけの事で、家に帰れば普通の恋人同士なのであるが、聖杯戦争以前より身に付いている主夫魂はなかなか抜けないもので、炊事のほとんどを彼が賄っているのが実情である。
勿論、凛も料理の腕前は大したもので、士郎曰く「中華は遠坂には適わないな。同じ火を使ってるのにどうしてこんなにも違うものか・・・」と些か悔しがっている程だ。士郎タジタジである。
一方、凛に言わせると「士郎の作るお弁当って、なーんか『お弁当』っていう感じがして好きなのよね。だから士郎から作ってもらってるのよ。」なのだそうだ。・・・凛ちゃんデレデレである。
「仕方ない。素直に謝って来るか。まさかみんなの前で『あくま』になる事もないだろうし。」
俺は覚悟を決めた。いくら何でも教室内で命を奪われるような危機に陥る事もないだろう。丁度昼を告げるチャイムが鳴り響いたので、俺は一成に簡単に事の次第を説明、なんとか解って貰えた。あとは遠坂だけなんだが。
軽く拳を握りしめて気合いを入れる。よし、いざ出陣だ。なんか決闘に行くみたいだな。
って、誰か呼んでる?何だ?
「・・・・・・おおい衛宮殿。お客さんでござるよ。」
「ん?俺にか?後藤君。」
「ああ、スペシャルゲストでござるよ。そちは幸せよのぉ・・・・・・。」
なんだか訳がわからんな。まあ、いい。簡単に用件を聞いてさっさと済ませてしま・・・・・・。
・・・・・・えーっと、夢でしょうか?それとも、幻なんでしょうか?
なんかドアの向こうに『あかいあくま』に似た女の子が立っているのですが?
「どうしたの、士郎?そんなに驚いた顔して。」
「い、いや。実はな・・・・・・。」
士郎は思わず凛の傍に寄ってつぶやいた。
「今朝寝坊してしまって、遠坂のお昼を作る時間が。」
「ああ、それなら大丈夫よ、ほら。」
といいつつ、笑顔で何かを渡す遠坂さん。
「こ、これって・・・・・・。何だ?」
「何だ、って。今はお昼休みでしょ?だから、お弁当持ってきたんだけど。」
刹那、周囲にどよめきが起こった。
「お、おい、衛宮のヤツ、いつから遠坂さんとあんなに仲良く・・・・・・。」
「というか、遠坂さん、衛宮の事、『士郎』って名前で呼んでるわよ・・・。」
「遠坂さんの手作りなのか?そのお弁当・・・・・・。」
「衛宮のヤツ。。。ぬっころす・・・・・・!。」
まあみんな好き放題言っております。そんな皆の視線を感じてか、士郎はたじたじしておりますが、一方の凛は我関せず、というか士郎しか見えていない様子であります。
「いやー、まあ弁当だろうなぁとは思ってたんだが。はは、はははは・・・」
「・・・・・・ひょっとして、お弁当要らなかった、かな・・・?」
上目遣いで士郎を見やる凛。
えと、遠坂さん、それ反則だから。そんな上目遣いで見つめられたら撃沈撃沈するだろさ・・・。事実、士郎の後ろにいた男子生徒何人かが、何故か恍惚の表情で床に崩れ落ちたのは言うまでも無い。
「いや、勿論居るさ。遠坂が作ってくれたんだし。」
「そ。よかった♪じゃ、屋上でも行きましょうか?」
ご機嫌な様子で凛ちゃんが士郎の腕をつかみ、連れ出そうとしたその瞬間、
「あ、あのー。とおさかさん。」
控えめに、一人の女子生徒が凛に声を掛ける。
「ん?何かしら、えーっと・・・・・・」
「三枝です。衛宮くんと同じクラスの、三枝由紀香です。」
「三枝さんね、で、何か用かしら?」
さっきとはうってかわって、すっかり優等生モードの凛ちゃん。ちょっと地を出していたことなど意識していないようだった。
「ちょっとお聞きしたいんですけど。いいですか?」
「ええ、私が答えられる範囲ならば、何でもどうぞ。」
「ありがとうございます。えと、あの・・・・・・。」
由紀香はちょっともじもじしながら、凛を見ている。なんかその仕草は、同姓の凛でさえも
「ああ、三枝さんてなーんか女の子女の子していて、可愛らしいわ。」
などと思ってしまうほど。
それに気がついたのか、「おい、三枝って、結構可愛いじゃん」「結構どころか俺様的にはバッチリなんだがなぁ。」と、全然関係なく盛り上がる不憫な男子生徒が数名。
それはさておき、本題。
「衛宮くんと遠坂さんって、・・・・・・お付き合いしているんですか?」
一瞬、2-5教室の空気が凍った感じがした。恐らく、みんなが気が付きながらも、敢えて言葉にはしなかった事を、三枝嬢はものの見事に言い放ったのだ。
サエグササンハ、ナニヲイッテイルノダ?
そんな空気が辺りに漂っている、だというのに、凛は
「ええ、恐らく皆さんもお気づきのように、私と衛宮くん、士郎はお付き合いしております。まあ、いい機会なんで皆様にも公表しておきますね。
ということですので、今後一切、『私の士郎』にはちょっかいを出さないで下さいね、皆さん♪」
凛の爆弾発言に、2-5の生徒全員加えて何故か廊下に溢れていた遠坂凛ファンの皆様から一層のどよめきが起こった。
曰く
「衛宮くん、何か遠坂さんの弱みを握って、それで・・・・・・」
曰く
「わ、わたしのしろう・・・だって・・・きゃ~~~~~。」
曰く
「お、俺の遠坂さんがぁ~・・・・・・うぎゃっ・・・・・・。」
ちなみに最後の悲鳴は、凛が無意識に放ったガンドが直撃したときのモノである。
「ちょ、遠坂、それは春まで黙っているんじゃなかったのか?」
「まあちょっとだけフライングだけど、いいでしょ?だって今日はさ・・・・・・。」
「今日は?」
凛は胸を張って右の人差し指をビシっと決めつつ、
「今日は年に一度のバレンタインデーじゃない♪こんなチャンスを逃したとあっては、遠坂の名折れだわ。だから、ね♪」
「別に今日じゃなくったって、俺は遠坂の事を・・・・・。」
ちょっと頬を赤く染めながら士郎が言うと、
「甘い!甘いわよ、士郎!まあ、アンタの事だから気が付いていないんでしょうけど、アンタの事を密かに狙ってる女の子は結構いるわよ。
例えば、あそことか!そことか!あっちにも!!」
凛は「ビシっ!」という効果音が本当に聞こえる程勢いよく、周囲の女子を指さした。指された当人達は、心当たりがあるのか、そっぽを向いたりタジタジしたりと、ほとんどさらし者状態となっていた。
「という訳で、私としては今日の良き日にはっきりと宣言しておきたかったのよね。」
「はあ、解ったよ。俺も素直に認める。だから、その、周りを脅かすのだけはやめてくれ・・・・・。」
「べ、別に脅かしてる訳じゃありませんわよ。ほほほ・・・・・・。」
もう完全に周囲の者達には凛の地がばれてしまっていた。それにも関わらず優等生ぶりを発揮している
士郎君、身も心も疲れ果てた様子で、ちょっとぐったりしています。凛ちゃん、それに気が付いているのか居ないのか、
「あ、そうだ。これはとどめね♪ はい、士郎♪」
と言って真っ赤にラッピングされた包みを手渡した。
「ひょっとして、これは・・・。」
「そう、昨日張り切って作ったチョコよ。・・・・・・士郎の手作りより出来が悪いけど。」
「あ、ありがとう、遠坂・・・・・・。」
二人とも顔を赤らめて、うつむきあっております。もうすっかり二人の世界に、周りはほとんど地獄絵図のようです。泣き叫ぶ者、泡を吹いて倒れちゃった者、何故か教室の窓から飛び降りちゃった者までおります。ああ、若いっていいですね・・・・・。
「ま、そういう事なので、一つヨロシクっ!」
と言い放つと、凛は士郎を引きずるように教室をあとにした。
途中、奇異の目で見られながら、士郎は気丈にもつぶやいた。
「はあ、俺って一生遠坂に頭が上がらないのかもな・・・。」
そんな士郎のつぶやきを聞いて、凛は嬉しそうに答えたのだった。
「当たり前じゃない。だって私と士郎の二人の物語は、私が主役なんだからっ!」
Fin
あとがきのようなもの
どうもJokerです。すんません、また勢いだけで書いてしまいました(笑)。文脈めちゃくちゃです。所々つながりがおかしいです。校正してもそう感じます^^;
ま、バレンタイン企画って事で許して下さいな。
最近、パンヤというオンラインゲームにはまっており、そこでのIDが「遠坂凛☆」なんてのを使っています。女の子の名前なんで、時々ナンパされるんですが(汗)、友人同士のチャットでは「れ、練習よ。ミスした訳じゃないんだからっ!」とかツンデレ風味で会話したりしてますw
出来るだけ、凛を可愛く、あまりツンを強調せずに書いたつもりですので、ちょっと原作のイメージとはかけ離れている部分も相当ありますけど、まあこれもUBWエンド後のストーリーと言うことでご勘弁をm(_ _"m)ペコリ